ソフトバンクグループ(SBG)は今、AI革命における「ASIC(人工超知能)No.1プラットフォーマー」を目指し、AI分野への集中投資を加速させています。
同社の株価は保有資産の価値(NAV)に大きく左右されますが、AIスーパーサイクルの進展に伴い、その評価をめぐる市場の視線はより厳しくなっています。本稿では、SBGの最新財務状況を基に、核となるAI戦略(ArmとOpenAI)の現状、そして市場が求める「真の価値」について考察します。
目次
1. NAVの健全性と強固な財務基盤
SBGの企業価値評価においては、従来のPER(株価収益率)などの指標よりも、NAV(時価純資産)とLTV(保有資産に対する純負債の割合)が決定的な指標となります。
割安な株価水準と潤沢な資金
2025年9月30日時点のデータを分析すると、以下の事実が浮かび上がります。
- 大幅なディスカウント:1株当たりNAVは23,379円。当時の株価(18,685円)と比較して約20.2%のディスカウント状態で取引されています。
- 強固な財務(LTV):LTVは16.5%と、経営陣が定める上限(25%)を大きく下回る健全な水準です。
- 潤沢な手元流動性:大型投資を実施しつつも、手元流動性は3.7兆円を維持。自社株買いや戦略投資への余力は十分です。
また、国内通信事業(ソフトバンク株式会社)も好調で、中間営業利益が過去最高の6,289億円を記録するなど、グループ全体に安定したキャッシュフローを提供しています。
2. NAV成長の「両輪」:ArmとOpenAI戦略
SBGの成長戦略は、Arm Holdingsと生成AIエコシステム(特にOpenAI)を「デュアルエンジン(両輪)」として位置づけています。
Arm Holdings:最大の資産
Armは現在、SBGの保有資産の中で最も重要な存在です。2025年3月以降、Armの株価上昇だけでNAVを6.7兆円押し上げる効果がありました。ロイヤルティー収入も前年同期比25%増と堅調に推移しており、AIプロセッシングに不可欠なIP基盤を提供しています。
OpenAIへの巨額投資
SBGは「SVF2」を通じてOpenAIに最大400億ドルの出資をコミットしています。ChatGPTのリリースから約2年半で、OpenAIの年間経常収益(ARR)は120億ドルに達しており、驚異的な急成長を遂げています。
3. 市場の視線とプレミアムの剥落:Armの評価とOpenAIの脅威
数字上は好調に見える一方で、市場はSBGの主要アセットに対して慎重な姿勢を崩していません。これには主に2つの要因があります。
① Armのマルチプル(評価倍率)圧縮
Armは好決算にもかかわらず株価が下落し、PER(株価収益率)等の評価倍率が切り下がっています。その背景には3つの懸念があります。
- アーキテクチャ統一期待の低下:NVIDIAとIntel/AMDの連携により、「すべてがArmで統一される」という独占的な期待値が低下しました。
- 中立性の揺らぎ:Armが自社でチップ設計(CSS/SOC)に踏み込む姿勢を見せたことで、顧客(AppleやQualcomm等)と競合する可能性が生じ、「中立なIPベンダー」というプレミアムが薄れています。
- SBG依存リスク:SBGの都合による株式売却(オーバーハング)の懸念が、需給のノイズとなっています。
② OpenAIを巡る競争激化
さらに、SBGが注力するOpenAIにも強力なライバルが出現しています。Googleの最新モデル「Gemini 3」は複数のベンチマークで競合を上回り、業界内でも絶賛されています。このGoogleの猛追を受け、OpenAI社内では警戒レベルを引き上げる動き(コードレッド宣言)も報じられています。
4. まとめ:投資家が注視すべきポイント
しかし、市場はかつてのような「熱狂的なプレミアム」を剥がし、よりシビアな評価を下し始めています。今後の株価動向を見極める上で、投資家は以下の3点に注目すべきです。
- 資本配分戦略:3.7兆円の現金を使い、ディスカウント解消に直結する「大規模な自社株買い」が発表されるか。
- SVFの現金化:帳簿上の利益だけでなく、投資先からの「イグジット(現金化)」を確実に進められるか。
- Armの中立性:Armが事業領域を広げる中で、既存の大口顧客との関係性を維持できるか。
SBGの株価は、NAVディスカウントの解消という明確なアップサイドを持ちつつも、ArmとOpenAIという二大巨頭の競争環境に左右される、まさに「未来への焦燥」を内包した銘柄と言えるでしょう。
※株式の購入については自己判断、自己責任でお願いします。


コメント