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「長年のお勤め、本当にお疲れ様でした。退職金の運用について、一度プロに相談してみませんか?」
定年退職を迎えた直後、あるいは退職金が口座に振り込まれた直後、驚くほどタイミングよく銀行から電話がかかってきます。彼らはあなたの「これから」を心配しているように見えます。しかし、その親切な笑顔の裏側に、彼ら自身の「ノルマ」という冷徹な計算が隠れているとしたらどうでしょうか。
結論から申し上げます。60代で銀行の窓口に行って「おすすめ」を聞くのは、今日この瞬間からやめてください。
今回は、30年以上かけて積み上げた大切なお金を守るために、知っておくべき銀行の裏側と「本当の資産防衛術」を徹底解説します。
目次
1. 銀行員は「運用のプロ」ではなく「販売のプロ」である
まず、私たちが抱いている最大の誤解を解かなければなりません。それは「銀行員は金融のプロだから、自分に最適な商品を教えてくれるはずだ」という幻想です。
銀行の窓口担当者には、毎月・四半期ごとに課される厳しい「販売ノルマ」があります。彼らが売らなければならないのは、「あなたを儲けさせる商品」ではなく「銀行に手数料をもたらす商品」です。
「リスクとは、自分が何をやっているか分からない時に起こるものだ。」
—— ウォーレン・バフェット
あなたが中身を理解せず、ただ「銀行員さんが言うから安心だろう」とハンコを押す行為こそが、老後最大の「リスク」なのです。
2. 退職金を狙い撃ちにする「魔の商品」3選
銀行が勧めてくる商品は、名前こそ立派ですが、中身は退職金を削り取る装置であることが少なくありません。特に注意すべき3つを挙げます。
① 毎月分配型ファンドの甘い罠
「毎月お小遣いのように分配金が入ります」という提案は、年金生活を控えた世代に非常に魅力的に響きます。しかし、ここには落とし穴があります。
運用の調子が悪い時でも分配金を出すために、自分が預けた元本を切り崩して払い戻しているケース(特別分配金)が非常に多いのです。自分の貯金を、高い手数料を払って少しずつ引き出しているだけ……これでは資産が目減りするのは当然です。
② 高コストな「テーマ型」投資信託
「AI」「脱炭素」「ロボティクス」など、耳あたりの良い最新テーマを冠したファンドです。これらは「今が旬」に見えますが、ブームの頂点で設定されることが多く、購入したときにはすでに価格が高止まりしています。さらに、信託報酬(管理費用)が年率1.5%〜2.0%と非常に高く、長期保有すればするほど銀行だけが確実に儲かる仕組みになっています。
③ 思考停止を誘う「ファンドラップ」
「プロがあなたに代わって資産配分を考えます」という、いわゆるお任せ運用です。一見、手厚いサービスに見えますが、実際には投資信託の手数料に加えて「ラップ口座管理料」という二重の手数料が発生します。年間で3%近いコストがかかることも珍しくありません。今の超低金利時代に、毎年3%のハンデを背負って勝つのは至難の業です。
3. なぜ60代は「断れない」のか?(心理的罠)
銀行の担当者は、非常に丁寧で礼儀正しいものです。定年退職して社会との繋がりが薄くなり始めた時期に、自分の話を熱心に聞いてくれる若い担当者に「情」が湧いてしまう……これは人間の心理として自然なことです。
しかし、忘れないでください。彼らの親切な態度は、あなたの資産を移転させるための「コスト」の一部です。高い手数料には、彼らの給料や店舗の賃料が含まれているのです。
4. 大切なお金を守る「3つの鉄則」
では、退職金をカモにされないためにはどうすればいいのか。具体的な防衛策を提示します。
鉄則1:窓口を捨て、ネット証券に移行する
SBI証券や楽天証券などのネット証券を使いましょう。銀行窓口で売られている投資信託のコストが年1.5%なら、ネット証券で買える優良なインデックスファンドは年0.1%以下です。1,000万円を運用した場合、年間で14万円、10年で140万円以上の差が出ます。この差額こそが、あなたの旅行代や孫へのプレゼント代になるべきお金です。
鉄則2:一括で購入せず「時間」を分散する
退職金が入ったからといって、一度に全額を投じてはいけません。相場は常に動いています。購入した翌日に大暴落が来る可能性もゼロではありません。2〜3年かけて、毎月一定額を積み立てる「ドル・コスト平均法」を徹底してください。60代からの運用は、攻めることよりも「負けないこと」が最優先です。
「干し草の山から針を探すな。干し草の山をまるごと買え。」
—— ジョン・C・ボーグル
鉄則3:「生活防衛資金」を絶対死守する
全額を投資に回してはいけません。向こう5年から10年の間に使う予定のあるお金(家のリフォーム、医療費、介護費用など)は、絶対に元本保証の預金で持っておくべきです。投資に回すのは、あくまで「当面使う予定のない余裕資金」だけに限定してください。
【具体案】60代からのシンプルなポートフォリオ例
もし、私があなたの親しい友人で、「どう運用したらいい?」と聞かれたら、こう答えます。
- 現金(預金):50% —— 何があっても動かさない安心の土台。
- 全世界株式インデックス(eMAXIS Slimなど):25% —— 世界の成長を取り込む。
- 国内・海外債券:25% —— 株式の暴落時のクッション。
これだけで十分です。銀行が勧める複雑な商品は一切必要ありません。
5. おわりに:自分の資産を守れるのは自分だけ
40年近い職業人生の結晶である退職金。それを誰かに委ねることは、自分の人生のハンドルを他人に渡すのと同じことです。
最初は難しく感じるかもしれません。ネット証券の口座開設に戸惑うかもしれません。しかし、その最初の一歩を踏み出すかどうかが、あなたの10年後、20年後の豊かさを決定づけます。
「最も重要なのは、規律(ルール)を守り、感情に左右されないことだ。」
投資は自己責任の世界です。誰のせいにもできません。だからこそ、正しい知識という盾を持って、あなたの大切な資産をしっかり守り抜いてください。

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