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ミステリー小説は難解な言い回しや独特な雰囲気を持った作品が多く、初心者にはなかなか手を出し辛い作品が多数あります。しかしながらミステリーとは同時にとても面白い作品ジャンルでもあります。
そんなミステリーを難しいという理由だけで敬遠している方々が存在する現状に幾ばくかの残念な気持ちを覚えます。
なので今回はミステリー小説の中でも特に読みやすく、初心者の方にも入り込みやすく、楽しんでもらえる作品をピックアップして、その魅力を余す事なく伝えられたらと思います。
目次
ロシア紅茶の謎(有栖川有栖著、講談社文庫など)
ある作詞家が謎の中毒死を迎える。彼が最後に飲んだ紅茶からは青酸カリが検出された。どうしてカップに毒がという謎が深まる表題作「ロシア紅茶の謎」を含む、珠玉の本格ミステリーが6篇収められた短編集。
本作は有栖川有栖の〈国名シリーズ〉第1作品集でもある。 奇怪な暗号や消えた殺人犯人に犯罪臨床学者である火村英生とミステリ作家の有栖川有栖の絶妙コンビが挑む!
……この作品のいいところはホームズ役とワトソン役がいるところでしょうか。ホームズ役の火村英生とワトソン役の有栖川有栖の軽妙なやり取りが、一見難解に見えがちなミステリーというジャンルに対して絶妙なさじ加減で柔らかいスパイスを加えています。
彼らのやり取りは読むものを楽しませ、また考えさせられます。もちろん『ロシア紅茶の謎』は短編集であり、6篇の違ったミステリーを楽しめます。いきなり長編に挑むのはちょっと、と尻込みしてしまう方にもとても読みやすい作品集なのではないでしょうか。
ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~(著.三上延著、メディアワークス文庫など)
本を読めないという特異体質を持つ五浦大輔は古本を売りに鎌倉の古本屋ビブリア古書堂へと訪れる。店主は人見知りだが、きれいな女の人で、持ち込まれた古書の謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていく。
……元々ライトノベルレーベルの電撃文庫から文芸部門として分かれたメディアワークス文庫が発刊している本作。その為あってか、綺麗なイラストを付けられる事が多く、ライトノベルに倣い個性的なキャラクターを随所に配置されたミステリー作品でライトノベルや一般文芸などを読んできた方々にも受け入れやすい作品となっています。
もちろんここに挙げたのは別の理由もあり、全4篇からなるこの作品はどれも心温まる作品にまで昇華されており、決して殺伐とした推理小説では終わっていないという点です。心理描写も巧みであり、下手な恋愛小説よりも綺麗で読みやすい仕上がりとなっています。
ロートレック荘事件(著.筒井康隆著、新潮社文庫など)
おれは8歳の時、従兄弟である重樹に重傷を負わしてしまう。滑り台から突き落として脊椎を損傷させてしまったのだ。そして重樹は下半身不随となる。後悔と自責の念にさいなまれたおれは重樹に「一生君のそばにいて不自由な思いはさせない」と宣言する。そんなおれと重樹の関係は大学を卒業した後も続き……、28歳の夏を迎える。
……『時をかける少女』という作品をご存じでしょうか。映画やドラマにもなり、その昔一大ブームメントを巻き起こした作品です。そんな『時をかける少女』を手がけた作者が放つ叙述トリックを使ったミステリー作品。さすがに大御所が書いただけはあり、お話の質は高く読むものを圧倒させるだけの説得力を持っています。
今作で使われるトリックは今では多くの作品に取り入れられており、ミステリーを読み慣れたヘビーユーザーであれば途中で犯人やトリックに気づくかもしれません。しかしながらこの本が出版された当時は、まだ新本格ミステリーが流行る前で当時読んでいた方は驚きを隠せなかったと言います。
ミステリー初心者の方にはとても読み応えがある作品と言えるでしょう。
探偵ガレリオ(東野圭吾著、文春文庫など)
オカルトチックな事件に挑む事を好む、帝都大学理工学部物理学科助教授である湯川学という天才博士。彼は友人である草薙俊平と協力して常識を超えた犯罪や謎を解いてゆく。そんな彼らが今回挑むべき謎とは……。
……ドラマや映画などにもなった今作は知っている方も多いのではないでしょうか。ただし原作である小説と映像作品では大きく違っている点があり、その代表格が相棒の存在です。原作である小説では草薙俊平という警視庁の刑事が出てきますが、映像作品では草薙俊平は出てきません。
そういった部分でもドラマや映画しかご存じない方も愉しめるのではないのでしょうか。そうしてガリレオシリーズの第1作目と銘打った今作は全5篇からなる短編集となっています。一般的なミステリーとは一線を画す、物理を駆使した推理小説とうのもまた面白いです。
無論、湯川学がオカルト事件のトリックを科学的に解明する様は読んでいてとても痛快です。
謎の館にようこそ 白(アンソロジー作品、講談社タイガ)
「館」というテーマに沿って複数のミステリー作家が書く短編ミステリー集。今をときめく著者達が世に問う。「新本格の精神」とはこれだと。読めば必ずや驚き、そして驚愕する事は間違いなし。新本格30周年記念アンソロジー作品。
……ミステリー作品の王道とも言える「館」をテーマに新進気鋭の作家達が東奔西走。様々な作家達が書く「館」に読む人の心が奪われる短編集となっています。いろんな作家さんの作品を読める事はもちろんですが、密室あり、青春あり、サスペンスありととても盛りだくさんの内容がまた心躍ります。
初心者の方もきっとお気に入りの作家さんを見つけられるのではないでしょうか。このアンソロジー作品を皮切りにミステリーの世界にどっぷりとハマっていくのもまた一興ではないかと思います。
十角館の殺人(綾辻行人著、講談社文庫など)
大学のミステリー研の7人が角島と呼ばれる孤島へと訪れる。この島には十角形の奇妙な館が建っており、館の主であり建築家の中村青司は半年前に炎上した青屋敷で焼死していた。やがて学生達を襲う連続殺人。果たして彼らの運命は?
……今作は無人島で過ごすメンバーと今回の孤島行きに参加しなかったメンバー達の視点が交互に入れ替わる風変わりな作品で、孤島では1人また1人と殺人事件に巻き込まれ、死んでいくメンバー達、一方、本土では死んだはずの中村青司から手紙が届くといった感じでお話は進んでいきます。
いい意味で騙されたと思わされる作品なので初心者の方には是非読んで欲しい作品です。無論、読み口もマイルドでキャラクターも立っており、エンターテインメント作品としては一級とも言えます。
まとめ
以上、私が思う初心者の方にも読みやすいミステリー作品であります。この他にもミステリー小説として是非読んで頂きたい作品は多数ありますが、まずは上記の作品達を読み、その上でお気に入りの作家さんと出会って頂きたいです。
ひとつでも気になった作品があったならば是非書店に足を運び、本を手に取ってみて下さい。そこからミステリーという世界が拡がっており、奥が深い深淵へと誘われるでしょう。そうしていつか私の作品もあなたの目にとまればと願ってやみません。ではまた機会があれば……、草々。
初心者におすすめしたいミステリー小説を紹介! 、了。
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