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【フレッシュチーズの種類と作り方】

Bru-nO / Pixabay
チーズはもともと家庭で作られるものであったことはその国のチーズ工房へいくとわかります。 生きるための食事、生き抜くための知恵がそのチーズ作りの中にありました。
牛やヤギは生きるために必要なミルクが取れます。 ミルクは飲むためのものですが飲み切らないものは保存をしなければなりません。
今のように冷蔵庫がない時代ではせいぜい1~2日がいいところです。
その為にバターやヨーグルトやさらにはチーズといった保存を目的とした加工をして知恵をしぼって生み出したのです。
それから酪農家という専門分野が生まれ、チーズを作る工房ができて、環境が整備されたのです。
その工房をもたない地域では当然、家庭でチーズを作っていたわけです。
手早く作れるチーズの代表
●カッテージチーズ
まずはヨーグルト作り
チーズの話なのに何故ヨーグルトなのか。 ヨーグルトは乳酸菌をミルクに加えることでできるいわばチーズの原型です。
むしろ第一次チーズといっても過言ではありません。
このヨーグルトの製造工程をつかむことで、チーズの製作工程が理解しやすくなるというわけです。
さてヨーグルトを作る際に、牛乳の中に溶け込ませる物質があります。
それは乳酸菌です。
専門用語ではスターターと呼ばれています。 このスターターにはいくつか種類があり、それぞれ菌の株が異なります。
有名な菌はブルガリアヨーグルトで「ブルガリクス菌」と「サーモフィルス菌」があります。
その他カスピ海ヨーグルトの「クレモリス菌」と「アセトバクター菌」もあります。 インドのヨーグルトはドイと呼ばれ「ダヒ菌」というブルガリアとカスピ海のいいところを併せ持っている菌です。
作り方
乳を沸騰させて、30度から45度程度に冷えるのを待ちます。 スターターを小量混ぜる。 あるいは市販のヨーグルトが立派な種になるのでそれを大匙1取って混ぜてもいいのです。 30度から45度程度の環境下で一晩置く。
これでヨーグルトができます。最初スターターを入れたときには何も発生しませんでした。 しかし一時間おきに見ていくと確実に牛乳に変化が生まれます。 滑らかだったミルクが徐々にどろどろになっていき、最終的には一種の塊になっていくといった具合です。
この変化が実はチーズの元と呼ばれる部分に似ているのです。 この状態がいわゆる『ヨーグルト』です。
さて今度は作ったヨーグルトをサラシなど使って濾していきます。
じっくり水を抜くことで固形部分と乳清いに見事に分かれます。
スプレッドタイプの『フレッシュチーズ』の出来上がりです。
さらに、スターターを入れる前に生クリームを使って同様にスプレッドタイプのフレッシュチーズを作れば、名前が『サワークリーム』になります。
また、さらしなどで濾さずにヨーグルトの状態をそのままにして、耐熱容器にいれた上で、オーブンにかけるれば別のチーズができてしまいます。
即席の『カッテージチーズ』です。
ヨーグルトは65℃の温度で23秒間加熱してしまうと乳酸菌も死んでしまいます。
つまり発酵はもうなされないで、単なる固形だけがのこるというものです。 ですが、味はチーズそのものです。
●パニール
牛乳に酸を混ぜる方法で作られます。 チーズを作るには最初に、
1.レンネットという特殊な酵素で作る方法
2.乳酸菌を使ってヨーグルトから作る方法
3.レモンや酢、ビネガーなど『酸』から作る方法
があります。 その中の三番目のチーズ作りを見てみます。 とても単純です。 牛乳を沸騰させずに60℃程度まで温めて、そこにお酢かレモンを入れるだけです。
これをサラシを使って水と固形物にするように濾してしまえば出来上がりです。
ヨーグルトは酸味がチーズの中に残りますが、こちらはそれを感じさせないミルクが凝縮された味になります。 濾しただけですとかなりやわらかい状態のクリームチーズのような感じです。
濾したものをそのまま絞って一晩固めるとインドの『パニール』になります。 あるいはギリシャやトルコのチーズです。
最後に珍しいチーズ
●リコッタチーズ
リコッタチーズとはその名の通り「ri(再び)」「cotta(煮た)」という意味であり、生の乳を煮詰めてつくったナチュラルチーズのことです。 ナチュラルチーズを作る際に大量でる水分、この破棄してしまう水分を“再利用”する過程で生まれるチーズなのです。
そしてナチュラルチーズの中でもフレッシュなものですからすぐに食す、使い切るということが前提になるチーズです。
リコッタチーズの作り方
リコッタチーズはチーズ作りの途中で出るホエーを煮詰めて作られます。 このホエーとは日本語で乳清と言い、乳が固体と分離した際に出てくる水分のことです。 ごく一般的に見られるものとしては、プレーンヨーグルトの中容器に入っている少し黄ばんだ汁気の部分です。 この汁気に当たるホエーを使ってチーズは作られるのです。 本格的な(正式な)作り方と簡易的な作り方があります。 本格的な方法は下記の通りです。
1. 搾った乳を63~65℃で30分加熱殺菌(低温殺菌)します。
2.次に凝固剤をいれて乳をチーズ化する作業へ入ります。 凝固剤としてはレモンやレンネットと呼ばれるオスの仔牛の第四の胃の中にある酵素などが使われます。
低温殺菌された生の乳にその酵素を入れることで乳の成分中の脂肪やたんぱく質が化学反応をおこし水分と固形に分離するのです。 此処までがどのチーズでも通る過程です。
固形はカードと呼ばれて取り出され次のそれぞれのチーズの過程へと持ち越されます。
3.残った汁(水分)=ホエーを88度程度の温度で加熱し続けます。 水分が半分くらいになってくるとどんどん白い固形物が増えていきます。
4.これを救って濾していきます。 濾して十分水分が抜けたものがリコッタチーズです。 固形物の掬うタイミングを計ると状態のいいリコッタができます。
このほか、簡易的な作り方もあります。
1. ヨーグルト等の水分部分を集めて火にかけます。あるいは無い場合には成分無調整の牛乳を使い同じように温めます。約80度程度です。既に低温殺菌されているのでさほど温度が高くなくてもいいです。
2. ここでエン酸やお酢、あるいはレモン汁を注ぎいれます。
3. 凝固したものを掬いとって30分程度水分を抜くとリコッタチーズの出来上がりです。
●ホエーの栄養素
ホエーはチーズ同様、ヨーグルトの上澄みとしてもあります。 このホエー自体には凝固して出来たチーズのもとであるカードと呼ばれる固体から染み出した蛋白質や低めの脂肪などが多く残っていて栄養価も高いです。
またその殆どが水分ゆえに、体内摂取した際の消化が速いという利点が注目され、スポーツ界の栄養ドリンク、あるいはプロテインとして商品開発などもされています。 また、インスリン分泌を促進するという医学的見地からも研究が進み利用が高まってさえいるのです。
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