大人の切ない恋愛小説を紹介!【読書初心者向け】

小説
Nietjuh / Pixabay

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小説のジャンルは数多にあれど恋愛小説ほど面白いものはありません。卓越した筆者の書くものは、とても切なく、とても甘く……、そしてどことなく危なげな雰囲気が漂っています。

もちろん主人公の恋が叶うのか、叶わないのかも見所で一度読み始めるといつの間にか時間が経っているなんていうのはしょっちゅうです。

間違って夜寝る前に読み始めてしまうと気づくと朝なんて事も多々あります。今回はそんな恋愛小説の中でも大人が読んでも納得な作品を紹介していきましょう。

目次

白いしるし(新潮社文庫、西加奈子著)

あらずじ……32歳独身で絵描きの夏目。彼女は恋愛にのめり込んで傷つく事を恐れていた。そんな彼女がある日一枚の絵を目にする。一瞬で心を持っていかれる。絵の作者は間島という男性であった。夏目の恋が走り出す。間島に夢中になる夏目だったが、間島は決して彼女だけのものにならない。

触れるたび、会話を交わすたび、彼女はどんどんと辛くなっていく。そして遂に笑えなくなった。…――恋の終わりを知る事は果たして人を強くしてくれるのかと読むものに問いかける問題作。

芸術家同士の恋を描き、読んでいて息苦しいと感じてしまうほどの切ない恋愛模様は一読の価値あり。自分自身の全てを賭けて恋愛する夏目をとても愛おしいと思わされるのは作者らしい表現の仕方ではないでしょうか。

ある意味病的とも思える主人公の行動の書き込みの濃さはフィクションとして読んだ時にとても面白いと感じるものです。読了後、「そう、今の自分はこれを読みたかったんだ」と思わせてくれる作者の筆力は圧巻です。

恋愛中毒(角川文庫、山本文緒著)

あらすじ……吉川英治文学新人賞を受賞した作品。神様に最後のお願いです。……どうか、どうか、私のこれから先の人生で他人を愛しすぎないように。他人を愛すぐらいならば自分自身を愛したい。そんな悲しいお願いを貫き通そうとする主人公水無月の前に小説家である創路が現れて彼女の心の中に強引に押し入ってくる。

水無月は思う。人を愛さなければ、これほど苦しむ事もなかった。恋愛なんて人生の一部でしかないのに、なんで私の全てを縛り付けるのと。そして水無月の狂気とも思える恋愛は加速してゆく。

結婚して子供や夫に囲まれ幸せに暮らす事が人生においての幸福だと考えている方は今作を是非一読して頂きたいです。主人公である水無月は創路を想うがゆえに言動がどんどんとエスカレートしていきます。遂には刑務所に入ってしまうなんて展開にびっくりするのではないでしょう。

ただし恋愛とはある種の執着であり、執着が行き過ぎるほどの熱い恋の果ては誰にも分からないものです。その解答して今作『恋愛中毒』があるのではないでしょうか。そう。中毒とは『ある種の物質を体内に摂取する事で機能障害を起こす事』なのですから。きっと今までの恋愛観が一変する作品だと。

ウエハースの椅子(新潮社文庫、江國香織著)

あらすじ……自分自身の好みを完璧に再現しているのが彼。彼は私を信じられないほど幸せにしてくれる。全てが終わった後、私達はくたり馴染んで体をくっつける。そんな彼と私。私は38歳の画家。恋愛というものにどっぷりとハマっている。ひとり暮らしの私の部屋には優しい恋人(※ただし妻と子あり)、そして野良猫だけ。そして私は私の中にある記憶と絶望を慈しむ。完璧なる恋の行方を想いつつ。

人は性行為をしている時に生きていると感じるのではないでしょうか。少なくとも主人公の女性は獣(けもの)として生きている。体の全てを使い相手を愛する。時には心の内面すらもさらけ出し、相手を快楽へと導く。そこには過ちもなく、おそらく正しさもない。

在るのは唯々相手を愛おしいという気持ちだけ。読み手の心の中にすっと入ってくる空気感がとても心地よい作品。文章だけであり得ないほど心が揺さぶられるのは作者の卓抜した筆致と心理描写の成せる業でしょう。もしもいまだ読んだ事がないならば一度は読んで欲しい作品です。

きみはポラリス(新潮社文庫、三浦しをん著)

あらすじ……恋に落ちた時、人はどうして恋に落ちたと知るのだろう。それは本能なのか、はたまた経験なのか。答えはここに在る。三角関係や禁断の愛、そして片思いなどといくら言葉を定義しても、この地球上にはひとつして同じ関係性はない。しかし恋は恋であり、人は生まれながらにして恋だと知っている。…――世界でたった1人の個人が誰かを愛する時、とても大切だと想う気持ちに篭められた光は特別な光だ。そんな数多くの個性的な光達が創り出すのが恋愛なる星空。最強の恋愛集、ここに爆誕。

禁断の愛だけなのかと考えて読み進めると良い意味で裏切られます。ほっこりしたり、ミステリータッチのものがあったりと、とてもバラエティに富んでいる作品集。一つ一つの作品は個々に独立していますが、根底に流れる人が人を愛するというものに決まった形はないというテーマ性が背骨として1本通っています。各作品冒頭でがしっと心を鷲掴みにされ、じわじわと面白みが増す書き方はさすがとは思わずにはいられないです。全てを読み終わった後に星空を見上げたくなる作品でもあります。

八日目の蝉(中公文庫、角田光代著)

あらすじ……第二回中央公論文芸賞受賞作。逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか。偽りの母子の逃亡生活は東京から始まり、名古屋、そして伊豆諸島へと続く。何度も何度も捕まりそうになりながらも逃げる逃げる続ける。

逃げた果ての2人には光がきざすのか。心揺さぶるラストまで息もつかせぬ展開が目白押しな傑作長編小説。まさか誘拐犯に共感するなんてと読書家から良い意味絶賛された作品。

ある男性から残酷な別れを告げられた主人公希和子が、その男性と別の女性の間に出来た子供を衝動的に誘拐してしまう。その子を「薫」と名付けて4年間警察に捕まるまで育て続けた。身勝手な希和子に腹を立てて読み始めると、どこに向かっていくのか読み手に悟らせないお話の作りと展開の妙味に感嘆を覚えます。

登場人物のほとんどが女性であり、男性の描写も決して好意的ではないゆえに女性の方が共感しやすいお話なのかもしれません。映画化もされた作品で第一級のエンターテインメント作品と言えるでしょう。

まとめ

さて今回は5本の作品をピックアップして記していきました。こちらの作品は読書初心者の方にも読みやすい作品なので恋愛小説の入門編として手に取ってみるのも面白いでしょう。

もちろん今回あげた作品以外にも数多くの名作恋愛小説があります。また機会があればご紹介していきたいと思います。では今回も最後までお付き合い頂き、どうもありがとうございました。また会えたら嬉しいですね。では。草々。

大人の切ない恋愛小説を紹介! 、了。

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