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チーズでよく言われるAOCとは?

MichaelBrilot / Pixabay
●AOCってなに?
チーズはたくさんの種類・製法があります。 各国、各地域、同じ国であっても作り方は様々です。 あるいは同じように作るチーズでも名前が異なったりします。
ヨーロッパにおいては産地や技法を踏襲することでオリジナルであることの主張が通ると保護される特権があります。
チーズの著作権というかまるで特許のような特権。 そうしたオリジナル厳守の考え方に固執した制度、フランスではそれを特にアペラシオン・ドリジーヌ・コントロと呼んでいます。
日本語に訳すと原産地呼称統制法で、頭文字をとって通称AOCといわれます。
チーズを作る上での産地、技術、品質よって認められるか認められないかとなります。
AOC製品は、ラベルや製品そのものに印刷された証印によって識別されており、フランスが独自に管理している方法の一つです。
似たもので、イタリアではDOCGがあります。
この2つの国に限らずヨーロッパ全土を支配している原産地呼称統制法がありそれはAOPとよばれています。 すべて、その資格を保持した場合にはチーズの製品にラベルが義務付けられるわけです。
つまり、品質において製品製造から出荷に至るまでオリジナルであるという保証がなされているものがヨーロッパ全土ならばAOPでイタリア独自ならばDOCGでフランスだけならばAOCとなるわけです。
●日本との比較
私達の国ではチーズではこの考え方はありませんが、その他の食品であれば似たようなケースはあります。
いち早く取り入れられているものとしては牛肉やお米です。
近江牛、松坂牛、十勝牛、神戸牛といえばその産地でなければ語ることはできません。 また魚沼産のコシヒカリ、青森県産のつがるロマンなどといったものもあります。
これは産地を護るということよりも、買う側のことを意識した分類ともいえます。 消費者に安心と安全を提供するのが日本式といえます。
逆に、売者側を守るという発想が元で考えられているのがヨーロッパ式といえます。
この制度は伝統を守るという発想が強くあるのです。 ブランドというのもまさにそれでそのステータスを保持するための努力が尊ばれています。
実際にフランスのAOCが付いたチーズを見てみます。
●フレッシュタイプのチーズ
『ブロッチュ』『ブロッチョオ』などの山羊や羊の乳でつくったチーズでコルシカ島産 フレッシュチーズの中の『リコッタ』のようにチーズ作りで破棄されてしまう水分(ホエー)を再利用し、継ぎ足しで乳をいれたのち90℃の温度で熱し続けて作られるチーズです。 この方法でしかもコルシカで生産されなければ『ブロッチュ』『ブロッチョオ』とは名乗れないのです。
●白カビタイプのチーズ
青カビタイプのチーズでは、『ブリー・ド・モー』という有名なチーズがあります。 このチーズは世界各地でまねをされ続けているほどです。 牛乳から作られるこのチーズ、産地はイル=ド=フランス地域圏、シャンパーニュ=アルデンヌ地域圏、サントル=ヴァル・ド・ロワール地域圏、ロレーヌ地域圏、ブルゴーニュ地域圏でつくられるチーズであること。 製法的には、牛乳にチーズの元を作るために使われる凝固剤の一種であるネットと呼ばれるものを加え、固まった後にそのチーズの元でカードと呼ばれるものを専用のスプーンですくって型に入れる。
次いで塩を加えてから一週間かけて水を抜き完全に滴り落ちる水がなくなってから熟成室で保管。その間に定期的に上下反転させます。 4週間から6週間、圧搾はせず藁の台の上で保管しながら丁度いい出荷タイミングまで寝かせる。 この産地、原料、製造方法を踏襲しているものだけが『ブリー・ド・モー』として販売が許されるのです。
●青カビタイプのチーズ
青カビタイプのチーズは『ロックフォール』が有名です。 まず、作られている場所がミディ=ピレネー地域圏であること、ロックフォール=シュル=スールゾン村の南側にあるコンバルー山洞窟内に生息する“ペニシリウム・ロックフォルティ”という青かびを使って作られること。 なおかつ、その洞窟を利用した熟成庫で熟成させたものでないとならない。 もちろん製法も昔から続いているやり方という厳しい制約があります。
その他牛乳で作るロックフォールとも呼ばれる『ブルー・デ・コース』も同じ地域で作られていて同じ青かびを使います。しかし、原料が異なりますからロックフォールとは言えないのです。よって独自の名前にしAOCをとっています。
●ウォッシュタイプのチーズ
ウォッシュタイプのチーズ『エポワス』はブルゴーニュ地方で作られるAOCチーズです。 原料は牛の乳で30℃ほどあたためたミルクに乳酸菌をいれて発酵させ凝固させます。 固まってきたら型に入れなおし48時間かけて水分を取り除き、型からはずした後に塩を全体的にまぶして保管。 その後マール・ド・ブルゴーニュといわれる蒸留酒で表面を定期的に洗い続けます。 こうして約4週間ほどかけて熟成させたのが『エポワス』で同じように作ってもこの地で無い限りエポワスではないのです。
同じウォッシュタイプでも型からはずした後に形状の崩れを防ぐために側面に柳やイグサの帯をまいた『リヴァロ』というチーズは、ノルマンディー地方、カルヴァドス県とオルヌ県の一部で作られているもので、大きさ重さによっても同じ名前でさえAOCが分かれるほど徹底されています。
●ハードタイプのチーズ
オーヴェルニュ地方のピュイ=ド=ドーム県およびカンタル県の一部原産のセミハード系チーズ、『サン=ネクテール』歴史的に見ても1000年を超えているとさえ言われています。
牛の乳が原料、最終的にチーズの元を塩でこすり洗いするなどチーズの作り方が最初から終りまで昔からの製造方法を踏襲した上に、直径21cm、厚さ5cmの平たい円柱状、重さは約1.7kgの形状をもち脂肪分が45%以上という約束があります。 このチーズがAOC取得したというのが1955年とかなり若くして承認されたのです。
●シェーブル系のチーズ
シェーブル系のチーズ『セル・シュル・シェル』はロワール地域を代表する山羊のチーズです。 乳酸菌の力で山羊の乳を固めて作ったこちらのチーズにはポプラの灰と塩を混ぜたものを付着させて酸味を和らげ雑菌の繁殖を回避させています。
ロワール地域には様々なシェーブルチーズがありますが、AOCの認可をえたこのチーズだけは木箱に入れられて出荷される等特別な計らいがあるチーズです。
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