ミモレットチーズとダニの関係



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いきなりタイトルでびっくりされた方も多いのではないでしょうか。

チーズは生きているということは知っていても別の生き物が附着しているなど想像すらできないはずです。

ではどんなチーズなのでしょう?

●ミモレット

フランドールという名の広い地域があります。 北側はベルギー領土、南側はフランス領土です。

かつてのこの地は、ベルギーとフランス北部にまたがる一つの地域でした。 この場所は古くから羊毛の産地であり貿易港としても栄えました。

もともとはオランダ(ブルゴーニュ公国)の管轄下でベルギーの独立後その治権を開放し今にいたります。

そしてこの地域というより、オランダが誇るチーズをベルギーでも作っていたのです。

そのチーズが赤玉で有名な『エダム』を模したものでした。 ベルギーでは春に作られるチーズで『シメイ』がこれにあたります。 チーズ作りに活気があふれる中で急変の事態に陥ります。

歴史をさかのぼること17世紀。 スペインの支配に対して反乱を起こした、いわゆる八十年戦争です。 ヨーロッパ間の闘争が激しくなる中、ここフランドール地域は海外の製品の輸入輸出を禁止してしまいました。 フランドールでは買い手もいなくなるゆえに流通が滞る事態です。 とうとうチーズすら作ることができなくなってしまったのです。

フランスではせっかくのチーズが手に入らなくなりました。

エダムを進化させたチーズのゆくへは、ベルギーからフランスへと向かいます。

フランス人はオランダの製法をいっそのこと修得して代品を作ろうと考えたのです。

なんと粉ダニを使う製法です。

この粉ダニはシロンと呼ばれるチーズにだけつくダニです。

それを表皮にはびこらせて密封する技術。

ダニの糞や、脱皮した皮がミモレットの表面に茶色っぽい層を形成していますからその形態はすぐにわかります。

しかし、チーズにダニと聞くと驚くかもしれませんがダニの力を利用したチーズはこの他にもあります。

●コンテアルテンブルガーチーズ

原理としては青かびが食品から生えてくるのをこのダニが食べてくれて糞がつき脱皮しあるいは死滅して表面が黒くなっていく。この作用が繰り返されていくうちにチーズのうまみが想像できない値へと変わっていくのです。

この技術のおかげでフランスもとうとうミモレットを誕生させられたのです。

ダニの力で熟成を促進させる知恵を修得したフランスはさらにオリジナルを目指します。 通常のベルギー式のエダムにさらに変化を持たせました。

当時フランス国を統括していた家系にオレンジ家というところがありました。 この権力者へ税を納めるにあたり通常のチーズやミモレットを当然納めていたわけですが、国民はもっと喜ばせようと考えたのです。 それが、オレンジの色彩を放つ色素の添加です。

ベニノキの種子から抽出される植物色素、『アナトー』というものを使うことでした。

この色素はウォッシュチーズやラクレットでも使われる食用の外皮洗浄色素です。

チーズはアルカリ性の表皮を持っているので酸性が強い酒や塩水だけでは傷んでしまいます。

折角できた外皮を壊さないためにもアナトーの様な中和剤が必要だったのです。

これをミモレットの中に入れることによってより明るいオレンジのチーズが完成し、領主にも喜ばれました。

オリジナルのエダムというわけです。

●種類

いまさらですが2013年にアメリカではこのチーズは寄生虫がいるとして、輸入を禁止する処置を出したこともあります。輸入業者や消費者は米当局の決定に怒り、抗議しました。今でも輸入が禁止です。

それは年数によってどんどんチーズダニの効果が表れたための偏見とも言えます。

実はミモレットは年数によってその名前が変わるのです。

いわば別の種類とさえいえます。

フランスは気候が日本の四季に似ていますが、北部に行くとやや寒いです。

まだ今のように贅沢ができる時代ではなかったときに、牛乳を使った保存食はヨーロッパの家々では当たり前の備蓄食材でありました。

ミモレットはいわば、ナチュラルチーズの中でも漬物のようにじっくりと寝かせることができるゆえに36ヶ月というものも当たり前として家庭にあったのです。

他の地域のチーズでも同じように寝かせるものはあっても、手ごろなサイズではなかったものです。

大きいからこそできる保存を、小さくてもできることに変えた発見がこのミモレットにはあったのです。

市販されているミモレットの月数で全く異なった表情を見せます。

「ジェンヌ」と呼ばれるものは熟成期間が2~3ヶ月と短く甘みが感じるテイストです。

12ヶ月の長期熟成させた「ヴィエイユ」はいよいよ表面に粉が吹き色合いもオレンジから濃いオレンジになります。

熟成期間が24ヶ月ともなる超長期熟成の「エクストラヴィエイユ」にいたっては、表面もボロボロで実もかなり固くなっています。

一度食べたならば、その味が日本人の味覚に合うものだと痛感するところです。

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