ビールの原料や製法、種類(タイプ)について元バーテンダーが解説!



ビールの原料

日本のビールは、酒税法により、「麦芽、ホップ、水を原料としたもの」と規定されています。

麦芽

ビールの主原料である麦芽は、大麦を水に浸し、発芽させてつくります。 使用する大麦は、ビール麦と呼ばれる二条大麦や、北アメリカを中心に栽培されている六条大麦が使われます。これらの大麦が発芽すると、でんぷん質やタンパク質を分解する酵素がつくられます。一般的に、二条大麦はでんぷん質が多く、六条大麦はタンパク質が多く、酵素力も強い。一方、小麦からつくられる麦芽は、特有のフルーティーな香りを生み出します。

ホップ

ホップは、クワ科のつる性多年生植物で、毎年8~9月に雌花につく毬花をビールに使います。

この毬花の中に、ルプリンという黄金色をした粒状の物質が含まれていますが、これには苦味成分が含まれています。

こうしたホップをビールに使うと、ほろ苦さと爽快な香り、色つやのよさ、泡もちのよさ、雑菌の繁殖抑制などの効果があります。

ホップの種類を大きく分けると、華やかな香りとおだやかな苦味をビールに与えるアロマホップ(チェコのザーツ種、ドイツのハラタウ種など)と、締りのある苦味をビールに与えるビターホップ(アメリカのクラスター種、日本の信州早生種など)があります。

ビールの約92%を占める「水」の質は、ビールの品質に大きな影響を与えます。

一般的には、淡色ビールには軟水が適し、色の濃い濃色ビールには硬水がよいとされています。

副原料

各国ごとに、その嗜好、風土にあった味のビールをつくり出すため、でんぶん質の副材料を20~30%の範囲で使用することがあります。

副材料の種類としては、米、トウモロコシ、こうりゃん、馬鈴薯などのでんぷん質原料や、糖類(でんぷんを分解したもの)があります。

ビールの製法

ビールの製法は大きく分けて、麦芽をつくる製麦工程と、麦芽から麦汁をつくり発酵させ、若ビールをつくるまでの醸造工程、若ビールを貯蔵後製品化するまでの製品化工程などに分けられます。

製麦工程

まず原料となる大麦を水に浸し、水を十分に吸収させる(浸麦)。この大麦を発芽床に入れ発芽させます。

このとき、大麦中のでんぷん、タンパク質が分解し、糖化酵素(アミラーゼ)を生成します。これをほどよいところで乾燥させ発芽を停めます。

こうしてできたものが麦芽です。このとき、淡色から濃色まで色の違うビールのどれに使うかによって、麦芽の乾燥を調節します。

一般的に、淡色麦芽は低温で短時間の乾燥をし、最終的には80°C前後で焦がします。濃色麦芽は反対に、高温で長時間かけて乾燥し、最終的には130~150°Cぐらいで焦がします。

また、黒褐色の麦芽で、非常に香ばしい香りを持つ、カラメル麦芽や色麦芽は、それ以上の高温で強く焦がし、風味づけとしてさまざまなタイプのビールに少量使用されます。

醸造工程

醸造工程は、原料を糖化、発酵しやすいように、麦芽を粉砕することから始まります。粉砕した麦芽は、醸造用水と混ぜられ、温度を45~100°Cの範囲内で温水コントロールをしながら、麦芽に含まれるでんぷんやタンパク質を温水の中に溶け込ませ、麦芽自身の持つ酵素の力で糖化させ、甘い麦汁をつくります。

糖化の終了した麦汁液を濾過して、ホップや副材料を加え煮沸します。ホップを加えることにより麦汁にビール特有の香りと苦味をつけ、煮沸により麦芽の酵素の働きを止め、麦汁を濃縮して所定の濃度にします。

煮沸終了後、沈澱したホップ粕やオリは取り除きます。

このようにして清澄化した麦汁は5~10°Cに冷却をし、酵母を加え発酵させます。発酵は7~10日ほどで終了し、アルコール分約5%の「若ビール」ができあがります。

この「若ビール」は、香味が粗く、未熟成分が微量に存在していて、風味のバランスが取れていません。そこで貯酒タンクの中で0°Cで熟成させ、円熟したビールヘと育てあげます。

発酵に使用する酵母に、上面発酵酵母を使うか、下面発酵酵母を使うかで、二つのタイプのビールになります。

上面発酵ビールの典型は、イギリスのエールで、常温で発酵させ、強いホップの苦味と香りが特徴です。

日本でおもにつくられているのは、下面発酵酵母によるビールです。6~15°Cと比較的低い温度で発酵させ、味がおだやかですっきりとした味わいのビールです。

製品化工程

熟成したビールは、シートフィルターやケイソウ土濾過機を使い、酵母カスや凝固物を取り除きます。しかし、まだビールの中には微量の微生物が残っているため、さらにミクロフィルターなどを使って、うま味の成分だけを残し、他の成分はすべて取り除き製品化します。

ですが、フィルターを使うにしても、品質のよいビールをつくるためには、11程全体の一貫したサニテーション(微生物管理)が大切です。

このようにして生まれてくるのが生ビールで、製品化工程中加熱しないため、クリーンな風味が生きており、これをそのまま、樽、ビン、缶などに入れて出荷する一方、昔から、通常、ラガー(本来は生、加熱殺菌の区別なく、熟成させたビールのことをいう)と呼ばれてきたビールは、粗い濾過をしたあと、ビン、あるいは缶に詰め、60°Cの温水のシャワーを20分間浴びせ、ビン、缶内の微生物を殺菌しています。

しかし、こうした加熱ビールは、加熱した時点で風味も低下するため、最近はフレッシュでクリーンな風味の生ビールに人気が集まっています。

ビールは、何年置いても微生物の繁殖はありませんが、タンパク質を含むので、風味のバランスが崩れやすく、早めに飲んだ方がおいしいです。 賞味期間は長くても半年、できれば3ヵ月以内にフレッシュな風味を楽しみたいところです。

ビールのタイプ

ビールの分類方法は、世界的に共通する絶対的なルールはなく、経験的に「使用酵母」、「色」、「産地」、「麦汁濃度」、「麦芽の使用量J、「苦味J、「発酵度」、「熱殺菌の有無」などで分けられるが、比較的よく使われるのが「発酵方法(使用酵母)」および「ビールの色Jによる分類です。

ピルスナー・ビール

チェコのプルゼニ(ピルゼン)でつくられる淡黄色のビールを原型とするもので、現在はこれに似たアロマを持つ淡色ビールの代名詞となっています。日本のビールのほとんどは、このピルスナー・タイプといえます。

エクスポート・ビール

輸出用という意味ではなく、ビールのひとつのタイプであり、副材料が使用されています。飲みごたえがある味ですが、全体的にはおだやかで繊細な感じがします。苦味も比較的弱く、色はやや濃い。ドイツのヘニンガーなどがあります。

ヘレス

ドイツの淡色ビールの総称で、ピルスナーより安価で大衆向きです。ホップの量も少なく、あっさりとしています。レーベンブロイ、シュパーテンなどがあります。

ライト・ピルスナー・ビール

副材料を30~40%使用し、ホップの効果もそれほど強くなく、清涼感を強調じたタイプのビール。アメリカのバドワイザー、ミケロブなどがあります。

ウィーン・ビールウィーン

で誕生した中等色のビールで、エキス分も高く、アルコールも5。5%と高い。やや重いタイプですが、苦味は弱い。

濃色ビール

ドイツ各都市でつくられています。濃色麦芽やカラメル麦芽を多く使用し、香ばしい香りを持った濃色ビールです。甘く濃醇で、ホップの苦味は弱いです。

濃色ボックビール

ボックビールは、淡色のものもあるが、一般的には濃いものが主流です。ホップを効かせて、低温で熟成した濃厚タイプのビール。

黒ビール

国産のものは、ドイツの濃色ビールを手本に、日本人向きに少し飲みやすく仕上げてあります。

ペールエール

ホップの苦味や麦芽の香味が強く、高温発酵に由来する果実香があります。ペールとは、色の淡い状態をいいます。イギリスのバス・ペールエールなどがあります。

ケルシュ

ドイツのケルン地方でのみつくられているビールです。苦味が強く、酵母に由来する果実香があり、炭酸ガスが弱い。ドイツではめずらしく、糖類の添加が許可されています。

ヴァイツェン・ビール

小麦麦芽を50%以上使用したビールで、ドイツのバイエルン地方特産です。炭酸ガスの刺激が強いが、味は柔らかいです。 ベルリン周辺でつくられるベルリーナー・ヴァイスは同じタイプのもので、乳酸発酵の酸味が強いので、シロップを混ぜて飲むことも多い。ヴァイヘンステファンなどがあります。

ビター・エール

イギリス産エールのうち、とくに苦味の強いもので、パブでよく飲まれています。

スタウト

砂糖を原料の一部として使い、ホップの苦味の強いビールです。麦芽の香味を強調しています。有名なものにギネスがあります。

ポーター

スタウトに近い濃色ビールで、発酵度が高いので残糖分が少なく、アルコールが5~7。5%と高い。現在は衰退傾向にあります。

アルト

ドイツのデュッセルドルフ周辺でつくられているビール。比較的色は濃く、麦芽の焦げ臭が強調されていて、苦味も強い。果実に似た香りがあります。

ランビック

ベルギーの代表的、かつ伝統的なビールで、特有の香りと酸味を持っています。未発芽の小麦が35~45%使用され、木樽に付着している酵母とバクテリアを利用し、主発酵後、1~2年自然発酵(貯酒)されます。 酸味を和らげるため、チェリーなどを漬け込んだり、砂糖を加えるものもあります。クリークなどがあります。

発泡酒

世界的に、大麦麦芽使用比率の低いビール状発泡酒の生産が高まっています。日本では“発泡酒”の名で親しまれ、正式なビールのシェアを大きく侵蝕しています。 英語ではロー・モルト・ビア、あるいはスパークリング・モルト・ビバレッジと呼ばれているが、まだ世界的な正式名称とはなっていません。

しかし、後者のスパークリング・モルト・ビバレッジの方を使うケースが目立ち、頭文字をとってSMBと称することが多いです。 世界的に見た場合、このSMBは麦芽由来の香味が薄いため、香味調整材として乳酸、酢酸、コハク酸、リン酸、亜硫酸などを添加しているものが多い。また、泡持ちをよくするために、窒素を添加するものもあります。

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